運気 7


だが、時間が経つにつれて、徐々に試合の主導権が片方に流れていった。
大山君が攻勢に出たのだ。相手のパンチを見切り、タックルで倒し、上から攻めたてる。それは、今までの彼の試合では見たことのないような、打撃による猛攻だった。下になった敵に、雨あられとパンチを降らせる。
が、それですんなり倒せるほど、グレイシーは弱くはなかった。打っても打っても、まるで柳のようにこれをかわし、耐え、反撃してくる。
終始一貫、大山君が優勢なのに、見ているほうは気が気でない。そのうちに私は、ふたたび悪い気分に陥ってきた。
グレイシーは、カウンターをとろうとしている……。私には、そんなふうに思われた。
ボクシングでいう、パンチのカウンターではない。攻撃に専心していれば必ずスキが出るが、その腕や足、または首をとり、一気に関節技で決めてしまうというカウンターだ。
無心に攻撃に出ている大山君を見ながら、私の脳裏を、この日起きてきたさまざまに不吉な出来事が掠めていった。


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