先輩 3


 久々の海水浴は鮮烈だった。水は冷たいが、入ってしまえば気持ちがいい。
 水に体を浮かべ、空を見た。美しい青と、雲の白。潮の香りと吹き抜ける風……。それは、厳しい寮での生活や、期末試験を終えたわれわれに与えられた、一つの褒美のようにも感じられた。
 ところがそのうち、私は自分の体が奇妙に、そして大きく上下していることに気づいた。おかしいと思ったたとき、すでに岸は遠ざかっていた。急速に沖に流されていたのである。
 引き返さなければ……そう思って必死に泳いだが、岸はなかなか近づかない。周辺では、やはり何人かの生徒や、教師すらもが浮き沈みしていた。彼らもまた、流されたのだ。
 一学年上の水泳部の先輩が追いついて来て、助けようとしてくれる。だが、いかな水泳部の力をもってしても、二人分の体を岸に近づけることはできなかった。


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