災害 3


もう一つの指摘は、アメリカはイラク戦争の戦費を捻出するために、治水予算を削ったのではないかというものだ。
「長年、恐れていた嵐がやってくる。一生に一度のものだ」
市長は、そう言って非難命令を出したという。だが、「去年も避難したが、別に何ということもなかった。今年もそうだと思った」と述懐する市民もいる。災害とは、おおむねそうしたものだ。人生のその他の不幸も、おおむねそうしたものだ。
それほど、長年に渡って、ニューオリンズの治水は問題があると指摘されていた。財政赤字に悩むアメリカのこと、実際には、イラクで戦争をしていなくてもニューオリンズの堤防はそのままだった可能性は高い。
しかし、あの戦争自体がなんともやり切れないものなだけに、惨事は防げたかもしれないと思うと、この指摘の内容はいかにも残念で、胸に影を落とす。
いずれにしても、人類の歴史のうねりのなかで、現在のわれわれの行為が未来の幸・不幸を決める。
産業革命とか、戦争をするしないのような大きなことだけではなく、日々行なわれている一人ひとりの決断のすべてが、見えないところで、知らないうちに、自分自身の未来を決めている。


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