国鉄のときと同様、郵政利権の人びとは、遠い将来、郵便料金が全国一律でなくなるかもしれない、郵便局の数が減るかもしれないと盛んに喧伝する。
かりに2017年に民営化されたとして、経営努力と財政援助をしてなお赤字が解消できない郵便局については、遠い将来も絶対なくならないとは言えないだろう。
だが、当事者たちに自助努力をしてもらわないで今のままにしておくということは、ますます膨れ上がる膨大な維持費を国民が税金で負担するということだ。
そのためには消費税も上がるだろうし、サラリーマンの所得税も上げざるを得ないだろう。「それでもいい、すべて負担します」という強い決意を国民が本当に持って「改革の必要なし」というならそれはそれでいいが、しかしそれが可能なのも財政が破綻するまでだ。
「見ろ、とりあえず今は健康なんだ、自分はガンになどなりはしない」と言ってタバコを吸い続ける人に、「まさに今、自分と周囲の健康がどれほど失われているかを考えてください」「実際にガンになったときの想像を絶する苦しみを思ってください」といっても、無理な話だ。
同じように、「とりあえず今、郵便局について不満はない、将来もこのままでいいじゃないか」と言う人びとに、「まさに今、実際にはどれほど国の富が失われているか考えてください」「将来財政が破綻したときの苦しみを思ってください」と言っても無駄だ。
ガンになるまで、ほとんどのタバコ吸いがタバコをやめようとはしないように、財政の破綻という惨めな事態がやって来るまで、われわれの多くは、この改革を小泉純一郎がどうしてもやりたがった理由を理解しないままいくのである。
それも一つの、国民の選択である。
青山圭秀
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