礎石 4


昨年の5月、マザー・テレサの修道会に入った知人の誓願式で、その誓願の言葉の美しさに、私は心洗われる気持ちだった。立願者たちは、こう言ったのである。
「主よ、あなたが私を選ばれました……」
聖書のなかで、イエスは言っている。
『あなた方が私を選んだのではない。私があなた方を選んだ』(ヨハネ15・16)
『あなた方は、この世のものではない。私があなた方を選んで、この世から取り去った』(同 15・19)
魚でいっぱいになり、沈みそうな舟のなかで、シモンは、もしこの人と関わりを持つならば、自分はこれまでのような普通の人生を歩んでいくことはできなくなると強く感じていたに違いない。
だからこそ、「どうか私から離れてください!」と叫んだのだが、そう言いながら、実はもうシモンの心はイエスに捉えられていた。
見透かしたかのように、イエスが言う。
『恐れることはない。あなたを、人を漁(すなど)る漁師にしてあげよう』
中東の片田舎で漁師をしていた、純朴でがさつ、教養のない男が、歴史に名を留める大聖人となったきっかけは、こんなふうだった。


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