たしかに聖母マリアだったと思う。だが、自分一人の体験であり、誰にも証明することができない。半世紀近くそう思い続けていた彼は、あるとき、インドの聖者にそのことを問うた。
「あれは聖母だったのでしょうか、それとも幻覚だったのでしょうか」
それに対し、聖者は答えた。
「間違いなく聖母ご自身でした。私も今回の人生で、ときどき聖母にお目にかかっています」
「どうしたら、もう一度お会いできるのでしょう」
フリオは、あのとき思わず毛布をかぶってしまったことを、もう何十年も後悔している。それに対し、聖者はこう答えた。
「ファティマに行ってごらんなさい。そこでお会いできますよ」
聖者は、フリオがポルトガル人であることを知っていたのだろうか。いずれにせよ、聖者自身、ファティマに何度も巡礼に行っているという。
ファティマの大聖堂 2