妃殿下 4


「カンボジアでも、やはり王室は世継ぎの男子をご所望なのでしょう?」
 これに対する妃殿下のお答えは、意外なものだった。
「たしかに、保守的な人の中にはそう考える人もいますが、私自身はそう思いません。男子と女子の間に、本質的な区別はないはずです」
 実は、カンボジアに不幸な内戦があったとき、王室のメンバーも迫害され、殺され、あるいは祖国を追われた。その後、彼女はフランスで教育を受け、アメリカに渡られ、そこで現在の夫である皇太子と巡りあったという。その意味で、彼女は東洋の精神を持ちながら、西洋的な教育を受けた現代人でもあった。
「日本の皇室にはいくつもの宮家がありますが、驚くべきことに、男子のお世継ぎが一人もいません。おそらく日本は皇室典範を改正し、将来は女帝が誕生することになると思われます」
 ぼくがそう言うと、彼女は応えた。
「そのとき、日本の女帝とこの子たちの間で、新しい時代を築いていくことができるのではないでしょうか」


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