妃殿下 1


 知人の知人は、新聞記者を辞めてすでに久しく、カンボジアに足繁く通いつめている。この人は、そこで井戸を掘っている。井戸を中心にして小さな集落を造り、内戦と貧困で疲弊しきった人びとが自立できるようにしてやることを、彼はこれから死ぬまで続けたいと思っている。そうしてかねがね、ぼくもこの仕事を手伝いたいと思ってきた。
 そんなところに、それとはまた別のNPO法人からシンポジウム参加のお招きがあった。セアロという個性的なお坊さんが中心になっているこのNPO(非営利活動法人)は、カンボジアのストリート・チルドレンを収容し、教育を施し、周囲の人びとにも物資を届けるという仕事をしている。
 実はぼくは、セアロとは何度かおしゃべりしたくらいで、そう多くを知らない。ずいぶんくだけた感じの、とてもいいおじさんという印象だ。ただ、彼がカンボジアの子どもたちを助けようとしている熱意だけは伝わってくる。
 偶然とは思えないこのお話にのって、ぼくは四国・高松に行くことにした。


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