翌朝、聖サバリ山に登るための儀式が待っていた。
皆さんがシンガポールに着き、
華やかなショッピングモールを散策しておられる頃、クマーラクディの寺院で、
僧侶は私が聖山に運んでいくココナッツの実に穴を開けた。
中のジュースをすっかり取り出し、自ら、温めたギーをこれに入れる。
このとき、大阪の会員さんが造ってくださったギーの残りの半分を使ったが、
日本で造られたギーが聖サバリ山に持って登られ、アイヤッパ神像にかけられるのは、 歴史上、初めてのことであるに違いない。
そのようにして作られたギー・ココナッツと、他に普通のココナッツを3つ、
そして、大量の米とコイン、紙幣などを袋に詰め込み、
ぶ厚い布を頭上に置いてからこれを載せる。
そうして寺院の周囲を一周し、いよいよわれわれは聖サバリ山に向け出発した。
聖サバリ山へ向けて出発
かつて人びとは、自宅のある村の寺院から頭に荷を乗せ、裸足で、
はるかかなたの聖サバリ山を目指した。
旅は数カ月にも及ぶものだったが、その間、サンダルを履くことは許されない。
その他、沐浴にお湯を使うこともできず、髭を剃ることもできない。
肉・魚・卵は御法度で、人と口論することもできない。
ベッドやマットに寝ることはできず、枕は木製でなければならない。
現在、われわれは車で聖サバリ山の麓まで行くことができるが、
それでも先に、各地の主要な寺社仏閣を訪ね、最後に聖クットララムの滝を経て、
それから聖サバリ山に登ることを計画した。
今も聖者アガスティアがお住まいになり……
予言や聖典を書き続けておられるといわれる聖なる滝を浴びるためだ。
今回の旅行をご一緒した皆さんはもう、とっくの昔に日本に着き、
優雅な年末の生活に入られているに違いない。
一方の私は、雨で水量の増した滝に入ると、
まるで頭を木刀で殴打されたかのような衝撃を受けた。
そのままいれば、頭髪がすっかりなくなるのではないというほど、
水が激しい。
体力と精神力の続く限り滝のなかに留まり、そこを出ると、
体の細胞の一つひとつまで清明になったかのような感覚に陥る。
そうしてわれわれは、この日の朝食を近くの料理屋でとることとした。
このときの食事が後に大きな禍根を残すものになるとは、
このときの私は知る由もなかった。
クットララムの滝2